地図にない山!? 鹿岳(一ノ岳)

◇◇◇ 鹿岳(かなだけ) ◇◇◇

 私がこの山を初めて知ったのは、7、8年前に山溪に載っていた記事でした。その後、4年程前の夏に1回、今年の1月に2度目の山行をしましたが、その時、2万5千図を見て「何かおかしいな?」と思いました。

 ここで鹿岳について紹介しておきましょう。
【山名】 鹿岳(かなだけ)
【山域】 西上州(下仁田−南牧村境)
【交通】 高崎<上信電鉄>下仁田<上信バス>小沢橋<歩>下高原(登山口)
【マップ】2万5千図:荒船山(以後これを見ながらお読みください。)
     平成2年発行の国土地理院の2万5千図「荒船山」
【山容】 その名の通り鹿の角のような2本!の双耳峰で、南が一ノ岳、北が二ノ岳。

 2万5千図「荒船山」の右中央に鹿岳があります。「岳」の字の右下に950mから6本の等高線を持った鋭峰(1010m)があり、「岳」の字の左に950/60mの2本の等高線の南北に長いピークがあります。仮に前者をP1、後者をP2と名付けましょう。「岳」の字の下がこのP1、P2の鞍部になっています。

 一方、登山道は南の一ノ岳と北の二ノ岳の鞍部に至り、一ノ岳をピストンし、二ノ岳を乗越して下高原の奥へ下山できるように付いています。そのつもりで、この地図を見ると下高原の橋の手前からP1、P2の鞍部に向かうように点線が延びています。(750mの地点で途切れている。) 最初はこの点線が登山道で、P1、P2の鞍部に至っているのだと思いました。するとP1が一ノ岳、P2が二ノ岳と言うことになりますが、するとおかしなことがあります。それは一ノ岳と二ノ岳の標高についてで、実際には下から見てもわかる通り、この両方のピークは同じくらいの高さで50mもの差がありません。すると、この地図の二ノ岳の標高(等高線)が間違っているのでしょうか。

 さて、このコースを歩いてみると分かるのですが、二ノ岳を乗越してから、再び少し登り返します(20mぐらい)。つまり二ノ岳と思っていたP2が、この20mで、一ノ岳と思っていたP1(等高線6本:60m)が二ノ岳であることが分かります。すると一ノ岳は何処へ行ったのでしょうか? もう一度、地図を見て下さい。P1(二ノ岳)の右下に下仁田−南牧村境線のくぼんだところがあり、標高850mの少し上から、岩場の記号が付いているところがあります。そうです、どうやらこれが一ノ岳のようです。「打田さん」のエアリアマップ「西上州・妙義」を見ると、この岩場の所に黒い点があり、一ノ岳と明記してあります。このエアリアマップと2万5千図を比べて見ると登山道と思っていた2万5千図の点線が、エアリアマップでは200m程手前に書かれまったく異なっていることが分かります。2万5千図が間違っているのです。

 登山道の間違いは訂正できるでしょうが、この一ノ岳のような岩峰、鋭峰で三角点、補点のないところは、2万5千図からは標高を知るすべがなく、先のような誤解を招くことになります。特に西上州には「ローソク岩」「一本岩」といった鋭い岩峰が多く、これらがこの地図からは消えてしまって、平坦なつまらないものになってしまいます。
 一ノ岳のような岩峰が地図から消えることのないように、三角点、補点のないところでも「*1010」や「×1010」のように標高を入れてもらいたいものです。