南アルプス・白峰南稜(北部)

 白峰南稜に行って来ました。地に足が着かない程の猛烈な這松の藪漕ぎで、
さすがクラシカルな藪漕ぎルートだなぁ(^_^;と実感すると共に、こういった
ルートがまだ残っている事が嬉しく思えました。

【山 域】南アルプス・白峰南稜
【日 程】2003.7.27−30
【コース】7/26:甲府駅でステーションビバーク
     7/27:−JR身延−バス−田代入口−保利沢出合−転付峠△
     7/28:−奈良田越−白剥山−笹山−2682m手前の樹林帯△
     7/29:−白河内岳−大籠岳−広河内岳−大門沢下降点−農鳥岳
      −西農鳥岳−農鳥小屋
     7/30:−間ノ岳−三峰岳手前−野呂川乗越−両俣小屋−北沢橋
      −北沢峠
【メンバ】和名倉山の住人(単独)
【天 候】27:曇り、28:曇り時々晴れのち夕立、29:曇りのち晴れ、30:風雨
【報 告】
 後から判ったのだが、笹山(黒河内岳)は、山梨百名山に選ばれたとかで、山百
のガイド本を参考に来る方が多いようだ。私はエアリアに書かれている奈良田越
から広河内岳まで15時間という情報だけで計画を立てた。転付−奈良田越の3時間
と、広河内−農鳥小屋の2時間40分を加えると20時間超!?距離的には、とてもそ
んなに掛かるとは思えないが、転付−農鳥間の山中1泊で無理せず計画。ただ、
コース中には水場が無いため、5リッターの折り畳みポリタンを装備に追加した。

 前夜発、甲府ステビ、朝一で身延経由、田代入口へ。ここまでは、去年蝙蝠を
登った時と同じ。バスには奈良田へ行く登山者がもう一人いただけで、田代入口
で下車したのは、私だけだった。
 田代入口は、丁度トンネルとトンネルの合間にあり、川沿いの旧道が左後ろか
ら右前にクロスしている。この右前の旧道を10mも行くと左に橋があり、ここに
登山届のポストがある。橋を渡って新道のトンネルの上を越えると、すぐに道は
2分するが、ここは下の道を行く。この辺、古いエアリアの裏図だと全然違うの
で注意が必要だ。

 あとは、ダムまでは迷うこと無い一本道。小1時間でダム(発電所)の分岐へ。
2万5千図(60年修正測量)では、発電所の先へ登山道が延び1200mの峠を越えて
いるが、現在は、発電所へは行かず、そのまま内河内川沿いに林道を先へ進む。
程無く林道と別れ、登山道は左の沢へ下りていく。ゴルジュの谷に付けられた桟
道を行き、何度か川を渡りながら4時間で、保利沢の東電小屋に着いた。プレハ
ブの小屋が2つ。鍵が掛かって一般者は利用できないようだ。小屋の横の吊橋は
渡らずに、小屋の上の道を行き、再び川原に出る。やがてヨモギ沢、アザミ沢の
2又から、沢を離れ500mの登りが始まる。

 転付峠の手前に水場があり、今日はここで水を補給。まずは空のペットボトル
に水を入れ峠に行って幕営。水をコッヘルに空けたら、5リッターのポリタンと、
1リッターのペットボトル2個(計7リッター)を満たす。この他500mlのお茶のペッ
トボトルが2つで、8リッター! 売るほどある(^_^;
 この水場の横には、途中で追い抜いて行った、単独行のおじさんが先に幕営し
ていた。聞くと、明日笊をピストンし、明後日、私と同じ笹山方面へ向かうとの
事。超人的な速さは驚きだ。
 峠は私一人。夕方、テンのような動物が出てきて、2本足ですっくと立上がっ
てこちらを見ていた。

 晩朝はコッヘルの水を使用。結局7リッターの水と1リッターのお茶を持って、
3:25出発。奈良田越までは、林道なので、懐電で十分進める。途中、路肩崩壊が
2,3箇所、落石で道が埋まっている所が2箇所程あった。やがて明るくなった頃、
奈良田越から来た4人とすれ違う。後で判ったのだが、4人は転付まで行く予定が
行けずに、奈良田越に泊まる事になったとかで、水も少なく苦しい思いをされた
ようだ。

 奈良田越の林道が左に下りて行くカーブミラーの所から、さらに北に進むと、
奈良田越の飯場跡に着く。ここにテントが1張。住人不在で笹山方面を往復しに
行ったのだろう。小広くなった飯場跡の隅には、潰れた小屋の残骸。この潰れた
小屋の奥の木に青いビニール紐があり、ここから取付く。

 すぐに尾根に乗ると踏跡が着いていて、10mも登ると壊れた小屋が現れた。扉、
窓、床が無いが、屋根はあるので、雨はしのげそう。樹林帯の中の踏跡をなおも
登る。樹林帯の中なので、下草はそれ程でも無く、まあ歩き易い。時々踏跡は、
消えかかるが、よく探せばすぐにその先が見つかる。

 重たい荷にあえぎながら、2ピッチ程で白剥山着。ここで反対方面から戻って
来たおじさんと遭遇。聞くと、さっきのテントの人で、笹山を往復して来られた
そうだ。昨夜は、例の4人組と奈良田越で一緒だったとの話しを聞く。コース状
況を尋ねると、枝がうるさく、思った以上に時間が掛かったとの事。どうやら、
ここから先が厳しそうだ。

 おじさんと別れ、先に進み始めると、やはり所々、松やシャクナゲが行く手を
阻むようになって来た。尾根通しが厳しい場合は、左下を巻いたりしながら、歩
を進める。何度も休みながら登るが、2585m付近で急に樹林が切れた。エアリア
では判らないが、2万5千図(塩見岳)では、這松と礫地が読み取れる。これから、
気持ちの良いアルペン的な尾根歩きが始まるのかと期待したが、大間違い!実は
ここからが、本コース中、最も厳しい這松の藪漕ぎが始まるのだった。

 笹山までは、標高差で130m程。通常なら30分も掛からないのだが。尾根通しが
這松で行けないので、全体的には左手(静岡側)に微かなケルンを拾って進むが、
所々まだまだ元気な這松を越えなければならず、這松の花粉と松脂(ヤニ)まみれ
になる。這松の向こうに歩き易そうな樹林帯があるので、そこまで行きたいが、
足が地に着かない這松帯の藪漕ぎが厳しく、へとへとになりながら、何とか樹林
帯に入った。樹林帯には、獣道が付いていて、これを進む。何て歩き易いんだ!

 どうやらメインの踏跡を外した様だが、こういった所は、皆、同じ所を歩けな
いため、ますます判り難くなるようだ。獣道を進むと、やがてメインの踏跡(登
山道とは言えない)と思われる、道に出た。どうやら笹山の少し先に出たような
ので、ザックをデポして、右に少し戻ると、石ころで広くなった笹山(黒河内)の
山頂に飛び出した。なるほど、山梨百名山の木柱がポツンと立っている。よく、
こんな山を選んだものだ。道標の先には、正規の踏跡と思われる道が付いてた。

 ザックまで戻り北峰へ。ここから、樹林帯を下るが、2682m手前の鞍部付近に、
幕営に良い小平地があり、今日は、ここにテントを張る。2人用のテントがやっ
と、という程の狭い所だが、今日の宿には十分だ。樹林の先には、白河内岳が望
めるが、手前の斜面の這松も厳しそうだ。重たかった水で夕食を作り、シュラフ
に入ってラジオを聴いていると、18:30頃激しい夕立があったが、10分もしない
で、止んでしまった。

 翌朝も、歩き出しからいきなりの藪漕ぎだ。2760m付近で右手の小ピークの左
石のごろごろした所を詰めるが、這松で行けそうに無いので、沢状の所を少し戻
り、這松の一番狭そうな所を選んで横断。その先、また石のごろごろした中を登
る。やがて傾斜が厳しくなった頃、這松の中にケルンを見つけ、そこを直登。白
河内岳の縁に飛び出した。広い山頂には何も無く、わずかに昔の山名表示板かと
思われる木片があるのみ。

 ここからはコンパスを合わせて進むのみ。エアリアには石に赤ペンキのマーキ
ングがあると書かれているが、もう消えているようで、先人の積んだケルンなど
を頼りに進む。また、這松も随分背丈が低くなり、急に歩き易くなった。大籠岳
手前の2770mの小ピークでは、雷鳥も姿を現した。と言う事は、、天気はあまり
良くなく、時々霧雨混じりになる。この小ピークから真っ直ぐには下りられない
ので、一旦少し戻って左手のルートを進み、大籠岳へ。

 大籠岳も三角点があるのみ。ここから広河内へ、途中の2772mで1本取って、
一旦下った後150mを登り、広河内岳の山頂に着いた。あいにく霧で何も見えない
が、これで白峰南稜も終了だ。もうここからは、一般路で、ハッキリとした道が
付いていた。携帯で踏破完了報告をして下山開始。

 大門沢下降点で休んでいると下から登ってくる人達と合流した。最初に来た人
は、沖縄から来た人で、1週間以上、山を巡って帰るそうで、今日は私と同じ農
鳥小屋泊の予定で、北岳などにも行ってから、木曽駒などにも行くと話していた。
が、、、水を持っていないとの事で、仕方ないので、私の500mlのペットボトル
を1本差し上げた。(この時点で、私の水はまだ3リッター位残っていた。ちょっ
と持ち過ぎたかも(^^;)

 次に登って来た夫婦は、私とは逆コースで南稜を行くとの事で、コースの様子
を少し話して、『這松の藪漕ぎ頑張ってください。』と言って、見送った。私の
方は、沖縄の人と、今日のメインの農鳥岳を登り始めた。初めは着いて来ていた
が、やがて差が開いて、私の方が山頂に先行した。時々日が差すと暖かくなるが、
すぐ又ガスが出てしまう。反対方面からは、熊ノ平に泊まった人が登って来た。

 この人に話しを聞くと、両俣から北岳への登山道は、今年は沢の水量が多く、
何度も徒渉が必要だと言われたとか。明日雨が降ると心配だ。また、今日は農鳥
小屋までの予定だが、時間的には十分早いので、熊ノ平まで行っても良い。熊な
ら水が豊富なので、そうめんなども出来る。しかし、熊まで行ってしまっては、
北岳に登る気力が失せてしまうかも知れない。(^_^; 一応、"白峰南稜"なので、
白峰北岳をコースの最後にしたいと思い、やはり今日は農鳥小屋までとする。

 農鳥から西農鳥までは岩場のアップダウンだ。途中、岩を抱くように、へつる
所もあったが、何たって一般道だ。今までと比べて、何と歩き易い事か。小屋へ
着いたら早速幕営し、水汲みに行く。ここは水場が遠いが、あるだけ良い。晩飯
は、打上げの鰻丼で、テントの外でのんびり食事。夕方、晴れて農鳥の岩山が、
天場から望むことが出来た。2800mの天場だけあり、日が蔭ると急に寒くなるの
で、シュラフに入り、いつの間にか寝てしまった。

 夜半、風が出て来たと思ったら、雨が降り出した。低気圧が来ているとかで、
翌日も全く回復の兆しも無いようなので、下山する事にした。とは言っても、農
鳥小屋からは、本邦4位の間ノ岳を越えないと野呂川乗越、両俣へは下れない。
朝4時まだ暗い中、雨の中でテントを撤収して出発。雨の中、間ノ岳に近づくと、
次第に風も強くなり、横殴りの雨となった。もう、殆ど休まずに間ノ岳、三峰岳
と進み(三峰へは登らず、手前の鞍部から「仙丈岳」の道標に従い)下って行く。

 このコースは去年歩いているとはいえ、野呂川乗越までの下りが延々と長く感
じた。もういい加減下りが嫌になった頃、乗越着。ここから一下りで両俣小屋へ。
小屋のお姉さんにバスの時間を聞くと、13:00北沢峠発との事。小屋で10分程休
んだ後、再び3時間歩いて、12:50に北沢峠着。何とかバスに間に合った。

 帰りは、長谷村の仙流荘で温泉に入って、仙流荘発新宿行きのバスで帰京した
のだが、このバスの予約をすると、温泉の入浴券がもらえるとの事で、売店で予
約している事を話して、先に券をもらったので、温泉代500円がタダになった。

記録)
 コースタイム:田代入口8:33−保利沢小屋12:35−転付峠15:45-3:25−奈良田
        越6:30−白剥山8:30−笹山12:25−2682m手前鞍部14:15-5:00−
        白河内岳6:30−大籠岳7:30−広河内岳9:20−農鳥岳11:40−農
        鳥小屋13:50-4:30−間ノ岳6:00−両俣小屋9:35−北沢峠12:50
 物価表:JR(三鷹−身延)\2520、バス(身延−田代入口)\1390、農鳥天場代\500
     長谷村バス(北沢峠−仙流荘)\1300、風呂無料(料金\500のところ)、
     仙流荘での焼肉定食\800、JRバス(仙流荘−新宿)\3600