今回は、最初から最後までラッセルのしっぱなしでしたが、12月の時と
比べ、元々ラッセル目的で来ている分、心構えが出来ていたので、あせり
もなく、歩く事が出来たような気がします。食料や燃料も予備日の分を用
意していたので、心に余裕があり、コースタイムの4倍のラッセルにも、
めげずに、何とかなったのかも知れません。

【山 域】 鶏頂山(藤原)エアリア・那須塩原の左下隅
【日 程】 1997/01/25-1997/01/26
【コース】 西登山口(鳥居)−弁天沼−鶏頂山(往復)−錦台(メイプル下)
9:45     13:20 6:00 9:00      11:00
【メンバ】 和名倉山の住人(単独)
【天 気】 1/25:雪、1/26:晴れのち小雪
【報 告】
 鬼怒川温泉からタクシー相乗り(6780円)で、鳥居のある西の登山口まで
運んでもらう。ここは、メイプルスキー場と鶏頂山スキー場の間になる。
 トレールは無い。スパッツを付けて出発。雪は膝下程度だが、登るに連
れ段々増えて来る。
 やがて右からメイプルのスキー場の音が、やかましく聞こえて来た。1
ピッチ程登ると、左も賑やかになって来て、メイプルと鶏頂山スキー場の
連絡コースへ飛び出した。スキーコース手前は、ラッセルした雪で深くなっ
ている。ここを横断して、すぐに対面の林間に続く登山道に分け入る。

 ここで、ワカンを付ける。汗もかいているが、休んでいると結構寒い。
 汗を拭いたタオルが凍って来た。この先、再びスキーのコースを横断、
もうスキー場のために、登山道はブチブチに分断されている。これなら、
リフトで上がれば良かったと思うが、もう遅い。とうとうスキーコースで
登山道がわからなくなり、メイプル側のスキーコースを肩身の狭い思いで
登る。

 メイプルの最後のリフトの裏手(トイレの裏)から登山道は続いていた。
ここからは、余り登りが無く、いきなり樹林帯を下り出す。大きなアップ
ダウンもなく、沼らしき所に出た。「ゴミは持ち帰ろう」の蛍光イエロー
ののぼり旗が、モノクロームの世界でやけに目立っている。傍らには、鹿
沼まで140mの石の道標があった。ここから若干登り気味になり、鳥居が見
えて来ると、弁天沼へ着いた。

 この先、ちょっと進んで見るが、雪が深くなり、ワカンを付けていても
股までもぐる様になり、あきらめて鳥居の手前にテントを張った。歩き出
しから3時間半。コースタイム1時間の3.5倍。さすがに、ちょっと疲れた
が、明日のために余力を残して行動を打ち切る。

 テントを張っていると、中年のおじさんの山スキーヤーがやって来た。
ちょっと先まで踏み跡を付けておいたので、「もう上まで行って来たんで
すか?」と尋ねられたが、「いや、すぐそこ迄ですよ」と答えた。そのお
じさんは、もっと先まで行くみたいだったので、スキーでも、トレースを
付けてもらえれば、明日はだいぶ楽かも知れないと思っていたが、程なく
して、そのおじさんも引き返して来たようだ。その後で、さらに3人の山
スキーの連中が来たが、この人達も、すぐに戻って来たようだ。

 なんだか、段々弱気になって来て、明日の朝まで雪が降り続いている様
なら、このまま下山しちゃおうか何て本気で考えていた。
 夜は、汗と雪で濡れた服も、良く乾かぬまま、若ノ花の優勝を聞いて、
シュラフにもぐり込んだ。上越ほどのドカ雪ではないが、相変らず小雪が
降り続いていた。

 翌朝、体の水分を全て吸ったシュラフが冷たくなり目が覚めた。外が明
るい。テントから顔を出すと、夜空は晴れ渡り、月がこうこうと照ってい
る。しょうがないから山頂まで行くか、と渋々自分に言い聞かせて、シュ
ラフから這い出す。

 朝食はラーメンで、テント撤収が無いので、起床から1時間で出発。6:00
と言うのに、外はまだ暗く、月明かりで昨日の山スキーのトレースを追う。
少し斜度が出て来ると、スキーの跡も消えて、膝から股までのラッセルが
続く。夏場なら、テントを張った鳥居の所から、45分で山頂まで登れるが、
今日は、何倍かかるかわからない。一応、下山も考えて、10時までに山頂
へ付けなければ、下山しようと決めた。

 傾斜はどんどんきつくなり、所々胸までのラッセルになると、ほんとに
ピッチが落ちるのが良くわかる。それでも徐々に高度を上げると、右下に
メイプルスキー場の明かりが見えて来た。左へ廻る様に登り、神様を祭っ
た石碑を2つばかり越えると、いよいよ稜線も間近になって来るが、相変
らずのラッセルのため、なかなか着かない。

 全く踏み跡の無い雪山では、少しでも木や笹が疎になった所を選んで、
さらに古い赤布やテープを頼りに進むが、途中、笹で道が消えている所も
1、2箇所あった。やがて上が明るくなって来ると、いよいよ稜線に出る
事ができた。左には、雪に霞んで、稜線上の御岳山と、その奥に釈迦ヶ岳
も見えるが、今日はこのラッセルでは、釈迦は諦めざるを得ない。

 稜線は左(南)側が切れているので慎重に進む。稜線へ出れば、少しは
風で雪が飛ばされたり、クラスとして圧雪されていて、もぐらないかと期
待していたが、さにあらず。依然としてラッセルが続く。時々、乗った雪
が、ミシッと音を立て沈み込むと、冷やっとするが、重い雪なので雪崩る
事はなかった。

 稜線に出てから40分、歩きだしの天場から3時間、実にコースタイム45
分の4倍の時間がかかって、9:00に山頂へ着いた。山頂には立派な神社が
あって、天場にもあった鳥居と鐘が、ここにもあった。スキー場の賑やか
な音が、ここまで聞こえて来るので、こちらも負けじと鐘を突く。寒いの
で、アンパン1つと、凍った缶のお茶を缶切りで開けて食べて、すぐに下
山開始。下りは、速い速い。登りであれだけ苦労したのが嘘のように、わ
ずか45分で、天場まで下りてしまった。

 ゆっくりせずに、30分でテントを撤収し、帰りは、もうラッセルは、し
たくないので、圧雪されたスキー場のコースの端っこをパカパカ下り、1
時間掛からず下山した。バスが4時まで無いのでタクシーを呼んで、鬼怒
川公園駅の上の町営温泉500円に浸かって、凍った体を暖めて帰った。