【山 域】 東大雪(ニペソツ山、石狩岳、トムラウシ岳)
【コース】 1日目 東京−帯広−糠平−十勝三股−杉沢出合
      2日目 −天狗のコル−ニペソツ山(往復)
      3日目 −小天狗−岩間温泉−シュナイダーコース入り口
      4日目 −石狩岳−JP−根曲がり廊下−沼の原・大沼
      5日目 −五色が原−五色岳−ヒサゴ沼−トムラウシ岳(往復)
      6日目 −化雲岳−天人峡温泉−旭川−東京
【メンバ】 2名(Blue Mountain さん 27 才、和名倉山の住人 30 才)
【日 程】 8/13(金)〜8/18(水)
【天 候】 13日:曇り/小雨、14日:曇り/小雨/雷雨、15日:晴れ/小雨
      16日:晴れ、17日:晴れ(トムラウシはガスの中)、18日:曇り
【報 告】

《熊の足型》8/13
 朝一のJAS帯広行き、BlueMountainさんのキャンセル待ちも取れて、2人揃って出発できた。糠平まではバスで行ったが、終点まで乗っていたら町を抜けて、スキー場のリフトまで行ってしまい、4、5分戻るはめになった。
 町外れにあるラーメン屋「番外地」で昼食。その時、壁に熊の足型が貼ってあるのに気付いた。この町に出没した熊のものだが、反対の壁にある水戸黄門の出演者(東野英二郎他)のサイン色紙よりも・新・し・い・ものだった。う〜む不安だ!
 糠平からは、タクシー利用とガイドブックに書かれていたが、糠平にタクシーは無く(営業所のみとの事だが、電話もつながらず)、上士幌から呼ぶことになり、小1時間待った。ここから杉沢出合までは、信号が無く、いかにも北海道らしい道だった。
 タクシーは林道入り口の管理小屋(無人)の前で止まってくれるので、計画書を提出するとよい。石狩方面の林道を分け、杉沢出合に着くと、既にテント数張りと車が止まっていた。
 小雨が降ってきたので、さっそくテントを張り、杉沢で水を汲んだ。晩飯を済ませすぐに寝る。これだけ回りにテントがあるので、熊の心配もどこへやら、ぐっすり寝られた。

《落雷》8/14
 今日は天狗のコルで幕営予定だが、水がないかも知れないので、ボッカする。各自行動中2L、共同5L、初日という事もあって食料5日分も含め、ザックが肩に食い込む。滑りやすい丸木橋を渡ると、すぐに急登が始まる。コルまで3時間、エアリアにある、小天狗のハシゴは無かった。
 すぐに天場らしき所に着いたが、ここはかなり傾斜しているので、もう少し先まで行ってみる事にした。結局、コルの一番先の登り始める手前、登山道の左下に一張り張れそうな所を見つけて幕営。
 行動食、水、ヘドラン等を持って、ニペソツへ向かう。前天狗、天狗岳の2つのピークを越えても、雲によって、肝心のニペソツ山の秀麗な姿は見えなかった。岩が多くなって、西側の尾根から回りこむようになると、まもなく山頂にたどり着いた。
 この夏、神室、大無間、ニペソツと、私が前から登りたかった3山に登る事ができ、とても嬉しかった。
 山頂は結構寒く、雲行きも怪しくなってきたので、コルまで戻る事にした。途中、前天狗に幕営している人達もいた。前天狗からの下りで、少し下り過ぎて踏み跡が消えてしまい、少し薮を漕いで天場に戻る。すでに雨が降り出し、2人ともびしょ濡れだった。
 夜になると、雨が激しく叩き付けるようになり、耳元でちょろちょろ水が流れる音がして、飛び起きた。テントの下を水が流れているのかと思い、触ってみたが、なんともない。ヘドランで、入り口から外を照らすと、すぐ上の登山道から水が流れ落ち、テントの横を小川のように流れていた。しかし、ここまでは来ないようだ。安心してシュラフにもぐる。が、それも束の間、今度は雷が鳴り出した。骨まで透けて見えそうな稲光で、だんだん近づいて来るのがわかる。とうとう、ピカッからバリバリまで1秒無い位の至近距離に落雷した。コルの南東側で、そちらにピークは無く、あるのは、数十m離れた木ぐらいだ。恐ろしくて、外へ出る事もできず、ただただ「落ちるな、落ちるなぁ」と祈るしかない状態だった。
 どのくらい経ったのだろうか、やっと雷も静まり。「無事だったぁ」と安心すると、ぐっすり眠り込んでしまった。

《荒廃した道と温泉》8/15
 翌朝、昨日の嵐が嘘のように、いい天気になった。前天狗に天張ってた人達は、どうだったろうか、などと言いながらテントの外へ出ると、50mも離れていない木が1本、丸裸になっていて、思わず2人で顔を見合わせてしまった。
 今日の予定は、岩間温泉まで下り、ユニ石狩登山口から十石峠、ユニ石狩ピストンで、ブヨ沢泊である。下りはエアリアにも、ガイドブックにも、「荒廃」と書かれ、コースタイムの記載がないが、3〜4時間も見れば下れるだろうとふんでの計画だ。
 天場から少し戻ると、笹薮の中に微かに「石」の文字が読み取れる道標があった。笹をかき分けると、踏み跡か、けもの道か、かすかに道らしきものが見つかり。ここから突入した。足元が滑るので、笹に掴まりながら小天狗まで小1時間かかってしまった。ここから、1618mのピークの下りまでは、何とか踏み跡をたどることができた。
 しかし、1618mを過ぎた所から、尾根がだだっ広くなるにつれ、踏み跡はと絶え、薮漕ぎになった。ここからは2、3回、踏み跡に復帰したものの、すぐに見失う。最後(標高1000mを切ったあたりから)は、傾斜が緩くなるので、大きな滝も無いだろうと、小さな沢へ下り、沢伝いに下りた。この薮漕ぎに6時間以上費やして、音更川に着いたのは12時過ぎだった。この時間からでは、ユニ石狩コースの登り返しは辛いので、今日はここまでとし、明日シュナイダーコースから沼の原まで12時間歩くことにした。
 そうと決まれば、今日は明日に備えてのんびりしようと、さっそく岩間温泉につかる。汗を流し、シュラフも河原で干して、そうめんと鰻で早めの夕食を取った。夕方少しでも明日の行程を短くしようと、シュナイダーコースの入り口まで30分程、林道を歩き、そこにテントを張った。

《根曲がり廊下》8/16
 今日は12時間行程なので、2−4で出発する。いきなりの徒渉だが、大き目の石を足場に沈め、木の杖を持って濡れずに渡る。コースには、新しい道標が幾つも付けられていた。何度となく沢を渡り、水場マークのある900m地点の先から急登になった。最大傾斜方向の直登で、おまけに倒木が横たわり、不安な登り始めだったが、倒木を越えると、普通のつづら折れの道に変わった。1100mからは歩き易い、緩やかな道になり、途中の「ニペ見の座」からは、少し雲をかぶったニペソツの美しい姿を見ることができた。
 9時前に1770mの稜線に飛び出した。南にニペソツ、目の前には石狩岳、その右にたくさんの雪をまとった大雪の山並み、音更山の下には大雪湖、遥か東方には、三角形の阿寒岳と、嬉しい晴天だった。
 目前の石狩岳に登れば、雲に隠れたトムラウシと、その真下に広がる沼の原が見渡せたが、まだかなり遠くに見える。あと6時間で着けるか心配だ。川上岳、JPと進むに連れ、沼の原もぐんぐん近づいて来る。1289mの最低鞍部には、赤と青のKWV(慶応ワンゲル)と緑のM(明大ウォーキングクラブ?)の看板が付けられていた。(KWVは南アの池口岳〜大無間、上越の平標山〜浅貝スキー場、日光白根〜皇海山その他、あちこちで見掛けたが、と言うことは、自分と嗜好、志向、思考が同じなのだろうか?)
 最低鞍部から沼の原まで、まだ3時間位掛かりそうなので、水場は確認せず、早めに出発する。ここから、いきなり笹薮のトンネルになった。エアリアにはJP〜鞍部が「根曲がり廊下」となっているが、これは嘘で、「本当の根曲がり廊下」は、鞍部〜沼の原の登りの1400m付近までだった。笹の下にしっかり踏み跡が付いてはいるものの、途中で2、3本の分岐があり、また、数mに渡り足元まで完全に笹に覆われている所も何ヶ所かあった。
 1時間半で1309m付近の小さな流れを横切って、いよいよ沼の原の登りになる。120mの急登の後、道が緩やかになると、湿地帯になった。北西へ向きを変えると目の前には広大な沼の原が見渡せた。熊がいないかと、きょろきょろしながら、下って行く。沼の原登山口の分岐から木道になり、これを左に入る。振り返れば、JP、石狩岳が池塘に映って美しい。湿原の素晴らしい景色に感動しながらも、熊が気になり足早になる。大沼に着くと既に2張り大テントが張られていた。

《食料を喰った獣と鳴きウサギ》8/17
 山中4日目の朝、明日は下山日なので、実質、今日が終盤のハイライトである。道も、天気も昨日までと比べれば、るんるんのはずだ。と!ところがだ。テントを撤収しようと外に出ると、私の行動食がない。昨日、フライとテントの間に入れておいたのに無い。夕べ風が強かったので、飛ばされたんだろうと回りを見たら、「あった!」ギャベ袋と一緒に5m以上飛ばされていた。拾いに行くと、「あっ」「やられた〜」袋はズタズタに破け、柿ピーやロッテのカスタードケーキといった小袋まで1つ1つ破かれて、中身が無くなっていた。「すわ熊か!」と思ったが、テントの回りには、3cm位の小さな足跡が付いていた。この足跡の主が犯人(獣?)らしい。仕方ないので残った行動食と、散乱したギャベを拾い集めた。
 寝る前に、熊除けにと、つけた蚊取り線香も、いつしか消えていて、役目を果さなくなっていた。まあ、明日は下山日だし、今日は残った行動食を少しづつ食べれば、いいだろうと気を取り直して出発することにした。BlueMountainさんのご好意により、行動食を少し分けてもらうこともでき、感謝するとともに、単独行で無くてよかった、熊で無くてよかったと痛感した。
 五色の水場までは下りぎみの道で、40分程で着いた。ここは湧き水なので、安心して水が汲める。昨日、沼に注ぎ込む小沢で汲んだ色付き水を捨てて、汲みなおした。ここは蚊が多く、水汲みしている間にかなり刺されてしまった。
 ここから先の五色が原でも、熊が出ないかときょろきょろしながら歩いた。だらだらではあるが、徐々に高度を上げてくると、左手に目指すトムラウシが見えてきた。五色が原上部は、とてつもなく広大なお花畑で、足取りも軽くなる。右へ回りこむようになると、五色岳山頂についた。こちらからだと、ほとんど登りはなく、山頂という感じがしなかった。
 ここからは、化雲岳をパスし、ヒサゴ沼へ下りるが、ここが意外に長かった。1つ目の雪渓は、ガスの中だったが、2つ目の雪渓を下り始めると、眼下にヒサゴ沼と目指す避難小屋が見えてきた。
 小屋に荷物をデポし、トムラウシをピストンする。化雲岳−トムラウシ間の鞍部に向かって、雪渓と岩のごろごろした所を登る。南西側(天沼方面)へも岩伝いに行けそうな気がしたが、BlueMountainさんに、もう道の無い所は懲り懲りだと言われて、素直にコース通り進んだ。
 天沼の手前の、細長い小さな池の辺りが庭園風のきれいな所だった。この先、北沼の手前と北沼の先で、少し登りがあったが、5日目ともなるとかなりこたえる。山頂も近づくと、鳴きウサギの鳴き声が、あちこちで聞こえるようになった。しかし、声のするほうを見ても、何もいない。まさに、声はすれども姿は見えずだ。最後は右へ回りこむように登って山頂へ飛び出した。
 山頂はガスの中で、展望を諦めてキュウリを食った。(何のこっちゃ?)山に長く入っていると生野菜がうまい。しばらく休んでいると、シマリスが現われて、登山者に食料をねだっているようだった。なるほど、昨晩、沼の原に現れた盗人(獣)も、実はかなり人馴れしていて、茂みの影から登山者が来るのを待っていたのかもしれない。
 山頂の気温は15℃ぐらいだろうか、体が冷えてきたので下山開始。少し下りた所で、登ってきたおじさんが、カメラを構えている。よく見ると、鳴きウサギが岩の上にちょこんと乗っていた。ウサギと言っても、耳が小さく、ハムスターみたいだ。人馴れしたリスよりも、可愛い気がした。鳴きウサギの姿も見られて、満足して小屋へ戻った。
 小屋で一緒になった、登山者の話しだと、忠別小屋の横で幕営していた人が、テントの中に置いといた食料を、キツネか何かに、テントを引き裂かれて持って行かれたことがあったそうだ。我々はテントを破かれなかっただけでも良かったのだろうか。

《暗い雪渓登り》8/18
 今日は下山日。旭川−東京のJAS最終便を予約しているが、明日は会社なので、できるだけ1本前の便で、早く帰りたい。と言うわけで2−3(天幕の撤収がなく、朝食がラーメンならば、1時間で出られる)で下山することにした。
 3時。いくら北海道の日の出が早いからといって、この時刻じゃ、まだ真っ暗だ。ヘドランをつけ雪渓を登る。雪渓は、入り口付近は靴の泥で黒く道が付いているが、中程へ来ると、だんだんはっきりしなくなる。雪質も朝のうちは硬く、所々、青氷になっていて緊張させられた。右の方へ向かって登り、上で雪渓の出口を探して、横に移動した。化雲岳まではコースタイムの2倍掛かったが、間違いなく一番乗りだ。
 へそには登らず、すぐに下る。もう登りはない、ひたすら下るだけだ。今朝は、ガスがたちこめ、展望はゼロ。右側がすっぱり切れ落ちていて、その縁に沿って下って行くと、突然右下に大きな雪田が現れびっくりする。この先、だだっ広い尾根になり、ポン化雲岳を過ぎて下ると、エアリアに道悪しと書かれた”泥道”になる。
 「荒廃路」、「根曲がり廊下」と来たので、「道悪し」とはどんなものか、Blue-Mountainさんと心配していたのだが、単なる泥道で安心した。(えっ?)
 途中、第一公園では、ワタスゲやキスゲがきれいだったが、6日目で足が痛いので、じっくり見て楽しむだけの、気持ちのゆとりはなかった。羽衣の滝の観瀑台で休んだ後は、あっと言う間に天人峡温泉へ下ってしまった。
 ここでは、2000円の買い物をすれば、バスの「ただ券」がもらえるそうだ。温泉の入浴料700円と食事をすれば、2000円になるだろうと思ったら、ラウンジ花水木は、11時からの営業だったので、代わりに土産1300円を買った。
 旭川で「うにいくら丼」を食べ、早めに空港へ行く。1本前の便にするため、キャンセル待ち番号6、7をもらう。出発15分前のアナウンスで1〜6番のキャンセル待ち呼び出しがあり、BlueMountainさんに先に帰ってもらう事にして、階段を登って行くのを見送った直後、再度アナウンスがあり、7〜10番もOKとの事で、慌ててザックと汚い登山靴をあずけ搭乗口へ。2人とも同じ便で帰る事ができた。v(^^)v