【山 域】 秩父〜奥多摩(東京−埼玉県境)
【コース】 武州中川〜若御子山〜矢岳〜牛首〜一杯水〜日原
【日 付】 1993.4.5(日)−4.6(月)
【メンバ】 単独行
【天 候】 4/4)曇りのち雨、夜半に雪に、4/5)小雪のち晴れ

 前方に犬を散歩させた人が、立ち止まって山の方を眺めている。奥の民家の飼犬も、山に向かって、けたたましく吠え立てている。「猿だ。」犬を連れたおじさんが、指差した方を見ると、大きな猿が降りて来ていた。こんなのに噛まれたら、たまらないので、猿が沢の方へ降りていって、見えなくなったのを確認して登りはじめる。

 降りていった猿が戻ってこないか、後ろを気にしながら登る。最初の分岐で、左の新しい道を直登する。この道は若御子峠を越えて浦山ダムに降りている。この峠付近の最高地点で、南東に登り始める。道はないので、登り易いところを登ればよい。やがて、大きな岩が現われるので、右側から巻く。ピッケルを杖代わりに、崩れやすい砂礫の斜面を巻いて、再び尾根の上に出る。稜線を忠実にたどると、赤い祠の祭られた、若御子山のピークにたどり着く。ここから南に登れば、大反山だ。

 ここから矢岳までは、去年歩いているので問題はない。雪もなく歩きやすいのだが、2週間会社を休んでいなかったので、疲労感が強い。矢岳の手前で、上(牛首方面)から下りてきた人とすれ違う。ロングスパッツを付けている所を見ると、上はかなりの積雪のようだ。

 とりあえず、矢岳までは雪もなく、たどり着くことができた。12:30、ここまで時間が掛かり過ぎている。疲れと眠気で、遅々として進まない。雨も、あと2、3時間で降り出すだろうから、一杯水はあきらめて、行けるところまで行って、幕営することにした。

 赤岩の頭を越えた辺りから、段々雪が出てきた。立橋山付近では、今にも降り出しそうな空模様になり、適当な所でテントを張れば良かったのだが、欲張って、牛首まで下り始めてしまった。途中で雨が降り出したが、幕営する場所がない。これなら、さっきの立橋山付近にすれば良かったと思ったが、もう後の祭り。とりあえず、牛首の最低鞍部にテントを張った。といっても、とてもテントを張るような場所じゃない。人ひとりが、やっと横になれる程度のところだった。

 和名倉山荘(マジックマウンテン・アルパインライト)を張ると、さっそくコッヘルをフライの端に置き、水を取る準備をした。暗くなる前に食事をして、シュラフにもぐり込むと、獣の足音が近づいて来るのがわかった。鹿のようだ。咳払いをするとどこかへ行ってしまった。フライシートにあたる雨音を聞きながら、いつしか眠り込んでいた。

 夜中に寒さで目を覚ますと、辺りは静まりかえっていた。どうやら雪になったようだ。テントの内側からフライをつつくと、ササーと雪が滑り落ちた。明日の朝を楽しみに、再び眠りに着いた。

 翌朝、テントの外へ顔を出すと、辺り一面、冬山に変っていた。霧氷が美しい。こんなに素晴らしい朝に、思わず顔もほころんでしまう。朝食後、テントを撤収して、いよいよラスト120mを登ることにした。ここからは、稜線通しは、笹薮に覆われて歩きにくくなる。赤いテープは、尾根の右(西)側、薮の薄いところに付けられていた。

 県界稜線が近づいてくると、道は左に折れ、鞍部の少し上に飛び出した。左の鞍部へ下った後、右(南西)へ笹を漕いで、縦走路へ出た。縦走路がまるで、大通りの様に感じられた。


#酉谷山に向かう途中北に棒切れに「矢岳 マップ必要」の道標が有りました。

(少し東側に下りたせいか、残念ながら、この道標は見過ごしてしまいました。)

 一杯水の小屋は相変わらず、きれいないい小屋でした。私が前に行ったのは、薪ストーブなどないときなので、もう5、6年になるのでしょうか。これからも、この小屋を、きれいに使って行きたいと思います。